肺外結核について基本的なことを調べてみた。10年近く前のレビューなのでIGRAについてはほとんど記載がない。その分またupdateは必要だろう。ちょっと神経のところを中心に言葉が怪しいけれど、全体像を把握するのには役に立ちそうである。
<肺外結核とHIV感染症>
・肺外結核はAIDSとTBがある患者の50%異常にみられる
・肺外結核と抗酸菌症の危険は免疫抑制下で増加する
・AIDS関連の結核のユニークな特徴
-肺外、播種性、急速な進行、腹腔内リンパ節腫脹、膿瘍形成、TB皮膚テスト陰性
・抗結核薬に対する反応は同様か良好である
・再発のリスクが高いかどうかは定かではない
・感染症のコンサルテーションでのアドバイス
→薬物相互作用とparadoxical responseと免疫再構築のリスク
<管理の原則>
*基本的なことは省略
・全ての患者にHIVのテストを行うべき
・ステロイド治療は有用
→髄膜炎、心膜炎、難治性の低酸素血症のある粟粒結核
<リンパ節結核>
・頸部リンパ節腫脹は最も一般的で、鼠径、腋窩、腸間膜、縦隔、乳房内病変も報告あり
・non-HIV患者では典型的には慢性的に、無痛性のリンパ節腫脹をきたす
・HIV患者ではよく発熱、盗汗、体重減少をきたす
・リンパ節は癒合せず、堅く、無痛性である
・治療しないと波動があり、洞管へ排膿する
・ほとんどの患者はツベルクリン陽性でレントゲンは正常である
・リンパ節切除生検による組織、抗酸菌染色、培養が診断方法となる
・non-HIV患者の吸引細胞診の有用性は様々である
→HIV患者の方が信頼できる。抗酸菌が多いため。最初の手段とすべき。
→PCRも有用である
・治療開始後に大きくなったり新しい病変がでるかもしれない。
→抗酸菌を殺す免疫反応のため
-HIV患者で抗ウイルス療法を行っている患者では免疫再構築によって同様の反応が起こる
・波動があり、排膿や吸引が出来る場合はそちらを行う方が利益がある
<結核性胸膜炎>
・米国では結核の5%を占める
・結核の胸水は早期原発、慢性肺疾患、粟粒結核の3つの分けられる
・よく急性の経過で咳、胸膜痛、発熱、呼吸困難をきたす
・典型的には片側性の低~中等度胸水を来たし、20%は肺病変が関連
・胸水
-リンパ球優位だが、2週間以内の経過だと好中球優位のことがある
-糖とpHは低いか正常
-抗酸菌塗抹は5%陽性のみ、培養は40%未満で陽性
-胸膜生検を加えれば90%以上
・ツベルクリン反応は2/3で陽性
・胸水でのADA, IFNγ, lysozymeは役に立つ
・ある研究でADA>47U/Lが99%の結核性胸水にみられた
→TBの事前確率が低い米国では陰性的的中率が高い
・PCRの感度は80%で特異度は100%とされている
・治療に反応は良い
・治療しなくても良くなるが、後に結核が再燃する
<骨結核>
・肺外結核の35%を占める
・脊椎、次いで荷重関節の関節炎、脊椎以外の骨髄炎が多い
・脊椎結核=Pott’s disease
-胸椎に多い
-前方下方の椎体から始まることが多い
-傍椎体、腸腰筋膿瘍に進展し、近接した組織に広がる
-局所の痛みや脊髄圧迫によって麻痺や便秘をきたす
・結核性関節炎
-ゆっくり進む股や膝の単関節炎
-痛み、関節腫脹、可動域制限
-排膿や膿瘍形成も慢性期にはみられる
-全身の症状は通常みられない
-放射線での変化は非特異的
-軟部組織の腫脹、関節近傍部骨減少、関節裂隙狭小化、軟骨下骨の腐食
・脊椎外結核性骨髄炎
-局所の痛みでどこにも起こりうる
-手根管症候群や滑膜炎、顔面神経麻痺などの合併症を起こしうる
・半分の患者はレントゲンで異常があるが活動的な肺疾患は一般的ではない
・診断
-関節液の抗酸菌培養は80%で陽性
-滑膜生検は診断に有用かもしれない(肉芽腫の確認や培養陽性)
-骨生検は骨髄炎の診断に必要
・外科的治療
-膿瘍の排膿、デブリ、脊柱固定や脊髄圧迫に必要かもしれない
-神経学的異常や脊椎不安定性、脊髄圧迫がなければ薬物治療のみで良い
<中枢神経結核>
・結核性髄膜炎、頭蓋内結核腫、脊髄結核くも膜炎がある
・髄膜炎はsubependymalの結核が破れてくも膜下に炎症が波及することで起こる
・くも膜に達するとは頭蓋内神経と隣接する血管を包んでいる
→頭蓋内神経麻痺や交通性水頭症を起こす
・頭蓋内の血管炎は局所の神経症状を起こすかもしれない
・結核菌蛋白に対する過敏性は髄膜症を起こすかもしれない
・頭蓋内浮腫は意識障害、てんかん、頭蓋内圧上昇を起こす
・結核腫は占拠性病変を形成する
・最初は倦怠感、頭痛、発熱、人格変化
→2-3週間後に持続する頭痛、髄膜症、嘔吐、混乱、局所神経症状
・治療しないと意識障害が進行し昏睡に至る
・非特異的な経過
-急速に進行する化膿性髄膜炎様
-微妙な認知症
-脳炎症状が前面に出る
・けいれんはどのステージでも起こりうる
・疑いが強ければ治療開始を遅らせてはいけない
・髄液
-中等度のリンパ球増加(100-500/μL);初期は好中球優位である可能性がある
-蛋白は100-500mg/dL、2-6gと極端に高いこともある
-Glu<45mg/dl
-抗酸菌染色は10-90%で陽性
-数回繰り返した液体に行うことで感度上昇
-遠心分離して抗酸菌染色を行うべき
-抗酸菌培養45-90%陽性だが4-6週間かかる
-髄液PCRは感度56%特異度98%なので除外は出来ない
-髄液ADA上昇は適切な臨床状況では有用
-頭部造影CTはくも膜炎や梗塞、水頭症、結核腫診断に有用かも
・経験的な治療は臨床的に疑ったら早期に開始すべき
-治療の遅れは悪い結果につながる
・デキサメタゾンでの6-8週間の治療死亡率と後遺症を減らす
・5歳以下、50歳以上、2ヶ月以上未診断の場合には死亡率高い
<腹部結核>
・胃腸管結核
-結核性腸炎は感染した喀痰、汚染した即時、血行性、近接組織からの波及で起こる
-小腸病変は潰瘍(最も多い)、過形成、潰瘍過形成
-症状:腹痛、下痢、体重減少、初s熱
-メレナ、直腸出血、腹痛があることもある
-右下腹部の腫瘤は1/4の患者では触れる
-回盲部と十二指腸回腸部は最も多い病変部:閉塞、先行、瘻孔形成
-直腸は裂肛、瘻孔、傍直腸膿瘍
-CTではリンパ節腫脹を確認できる
-最も大事な鑑別はクローン病。その他アメーバ、悪性腫瘍、エルシニア、アクチノミセス
-組織診断は直腸鏡か腹腔鏡
-手術は合併症があったときに行う
・結核性腹膜炎
-HIVや肝硬変、腹膜透析患者でリスクが高くなる
-知らぬ間に進行する腹水、腹痛、発熱
-腹水は滲出性、SAAG<1.1、白血球は150-4000、リンパ球優位
-腹膜透析患者では好中球優位のことがある
-1Lの腹水を遠心して抗酸菌染色と培養を出すと良い
-ADA>33U/Lがcut off
-腹膜生検が95%以上診断でき、考慮すべき
・尿生殖器結核
-90%以上が無菌性膿尿±顕微鏡的血尿
-腎盂造影:“moth-eaten calyx” or papillary necrosis
-CTで腎石灰化、水腎症、瘢痕、腎外病変(尿管狭窄、萎縮膀胱、精管や前立腺石灰化)
-3回の朝の抗酸菌培養で90%診断がつく
-腎臓摘出はほとんど適応にならない
-間質性腎炎以外では腎機能は保たれる
-男性は性器結核は通常腎結核に関連している
-診断は外科的手術で行う
-乏精子症は一般的で持続数かもしれない
-女性は卵管内膜から広がり、骨盤痛、不妊、陰部出血をきたす
-性器結核は治療に良く反応
-手術は女性で広い範囲に卵管卵巣膿瘍があるときに必要
<その他>
・粟粒結核
-初期感染の播種もしくは治療しなかった結核の数年後に起こる
-AIDS患者で肺結核がある10%、肺外結核がある38%にみられる
-症状:発熱、悪寒、盗汗、体重減少、食欲低下
-臓器によって症状が異なる
-敗血症性ショック、ARDS、MOF含む劇症型の報告あり
-85%以上の患者に肺に2-3mmの結節
-L/D:正球性貧血、白血球増加や減少、ESR上昇、低Na血症
-痰、BAL、胃液、CSF、血液培養、肝臓や骨髄生検が診断に必要
-ツベルクリン反応は陽性50%未満
-治療は抗結核薬やいくつかの状況ではステロイド
・結核性心膜炎
-縦隔リンパ節、肺、脊椎、胸椎や播種からの波及
-症状:突然もしくは進行する胸痛や呼吸困難、下腿浮腫
-診察:心肥大、頻脈、発熱、心膜摩擦音、奇脈、頸静脈怒張
-心膜生検が診断に心嚢液単独より有効
-抗結核薬と共にステロイド使用が推奨される
-症状緩和と液体を減らす意義はある
-収縮性心膜炎への進行や死亡率は改善しない
-心嚢穿刺を繰り返すよりはドレナージが望ましい
・TNFα阻害薬関連結核症
-InfliximabやEtanerceptを使用したRAやクローン病患者
-Infliximab12週間、Etanercept12ヶ月後
-肺外結核が52-57%
-LTBIのscreeningは重要
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